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モンゴル地方検診2017.8

2017年11月16日

8月のモンゴル地方検診に参加された秋田赤十字病院 小児科の田村真通先生が、今回参加された感想をお寄せくださいました。以下、ご紹介させていただきます。

10年ぶりのフブスグルでの地方検診

モンゴルの国内線、ムルンに到着

モンゴルの国内線、ムルンに到着

2017年夏のモンゴル渡航診療は8/9~15の7日間で、地方検診はフブスグル県(Khuvsgul: Хөвсгөл,)を訪れました。フブスグル県は人口約12万人、モンゴル国の最北部に位置しロシアと接しています。県庁所在地はムルン市です。8月9日に成田からウランバートル入りし、翌日10日、検診班6人(木村純人先生、矢内俊先生、田村、モンゴル側スタッフ)は飛行機でムルン入り、現地に車で向かった通訳のガンバさん、大束さん夫妻と合流、さっそく午後から検診を開始しました。一方、カテ班(杉山央先生、小澤晃先生)は、10日にモンゴル国立母子保健センターで心エコー検診後、カテーテル治療を敢行し、11日早朝の飛行機でムルン入りというハードスケジュールでした。

 

 

ムルンの空港に到着した一同

ムルンの空港に到着した一同

フブスグル県県庁所在地のムルン

フブスグル県庁所在地のムルン

馬を市場へ出すため輸送中のトラック

馬を市場へ出すため輸送中のトラック

 

 

 

 

ムルンには理事長の羽根田紀幸先生もお出でくださり、総勢15人位の大所帯となりました。さて10日11日の2日間にわたるムルン検診では、初日の会場セッティングこそ電源の調整等でやや時間がかかりましたが、始まってからは現地の医師、看護師などの協力体制も十分機能し、順調に診察、心エコー検査、説明と進みました。最終的には計130名の検診を行い、55名に何らかの心疾患を認めたことが報告されました。今回は特に、現地病院の、小児循環器の研修を受けた小児科の先生が事前に診察してくれていたおかげで、スクリーニング目的の子どもたちが比較的少なくなったのだと思います。

待合室には大勢の親子が

待合室には大勢の親子が

フブスグル県立中央病院

フブスグル県立中央病院

受付にてカルテを作成

受付にてカルテを作成

 

 

 

 

 

 ここ数年の地方検診で感じられることは、各地方で、大げさに言えばモンゴルじゅうで、小児心疾患に対する理解が確実に広まっているということです。もちろん超音波診断装置の普及に伴い診断技術や日常管理が向上したことも大きいと思いますが、何よりも心臓病の子どもたちを何とかしたい、何とかできるかも、と考えてくれるようになったことに進歩・発展を感じています。モンゴルでも循環器内科を専門とする医師はもともと地方にもいらっしゃいましたが、その先生方が小児心臓病にも興味を持ってくれるようになりました。またモンゴルの小児循環器の研修を受けた先生と一緒に検診することも、今回が初めてというわけではありません。まだまだ先の話にはなるでしょうが、将来的には手術を要さない、あるいは手術を急がない疾患を持つ患者さんが、地方にいながら適切に経過観察してもらえる体制が作れるのではないかと期待を持ちました。その一方で、必要時に小児心臓病専門医(おもにモンゴル国立母子保健センター)に診療依頼する道筋も着実に根付いてきたように感じられました。2003年、バガノール検診に端を発する15年にわたるハートセービングプロジェクトのモンゴル地方検診が、カテーテル治療で命を救うこととは違った意味で、モンゴルの医療向上に役立っているのかもしれませんし、もしそうだとしたら望外の喜びです。

ムルンで検診をする田村真通先生

ムルンで検診をする田村真通先生

スクリーニングをする杉山央先生

杉山央先生の検診を見守るモンゴルの先生

木村純人先生

スクリーニングをする木村純人先生

2日間の検診を終え、病院スタッフと共に記念写真

2日間の検診を終え、病院スタッフと共に

夕方のフブスグル湖

夕方のフブスグル湖

2泊めのツーリストキャンプ

2泊めのツーリストキャンプ

 

 

    さて無事検診を終えた11日夕方、県立病院のスタッフとお別れの写真撮影、その後ムルン市から約100㎞離れたところにあるフブスグル湖まで足を延ばしました。フブスグル湖は世界で2番目に透明度の高い湖として有名(ちなみに世界一はバイカル湖)で、今回のメンバーでは大束さん以外は初めて訪れる人ばかりでした。途中北緯50度東経100度の地点を超えて湖に到着しましたが、「モンゴルの青い真珠」「モンゴルのスイス」と称されるその言葉通り、本当に大きくてきれいで心洗われる場所でした。

遠く北の方向にはなんと蜃気楼が・・・、写真やテレビでは見たことはありますが、生まれて初めてこの目で蜃気楼を見て感激しました。時間が経つのも忘れ、湖畔に座って見とれてしまいました(一応写真にとり帰国後見直しましたが、しょせん素人写真、実際の感動には遠く及びません)。その日は湖畔のゲルキャンプで一泊、後は飲んで寝るだけと思ったらちょっとしたハプニング、どうしても我々に診察してほしいのでこれからこどもを連れてゲルキャンプまで来る家族がいるとのこと、まあいいかとあまり深く考えずに承諾、到着後ゲル内で最後の検診患者診察となりました。

 この晩生まれて初めてゲルで夜を明かしました。8月だというのに日本人には結構寒く感じられ、夜通し誰か(おもに小澤先生と大束さん)がストーブの火を絶やさないように薪をくべていました。ところがモンゴル人スタッフは夜中にストーブの火を消し、ほとんどパンツ一枚で眠りについたそうです(本当は真っ裸がいい:ガンバさん)。決してかなわないと思いました。翌朝は湖の東岸からの日の出を見てすがすがしい気持ちになりました。朝食に出た魚(マスでしょうか)の燻製まるごと一匹にびっくりしたあと無事ウランバートルに戻り、14日までカテ治療、と結構頑張った渡航診療でした。

初めてのゲルでの夜

初めてのゲルでの夜

夜10時過ぎに最後の患者さんが

夜10時過ぎに最後の患者さんが

朝食に出された魚の燻製

朝食に出された魚の燻製

 

 

 

   さて今回の地方検診がムルン、フブスグル湖と聞いた時、即座に檜垣高史先生と片岡功一先生の顔が想い浮かびました。私の記憶に間違いがなければ、かれこれ10年ほど前に、両先生は検診のためにこの地を訪れているはずです。その当時の移動は車で、一部道なき道を突っ走りながら、途中で一泊しながらムルンにたどり着いたはずです。確かその時もどこかのゲルに泊まり、あまりの寒さに片岡先生が、「ここで火を絶やしたら死ぬ」と必死の形相でストーブの火を死守していたと、おもしろおかしく話していたことを思い出しました。

それに比べると今回は直行便の飛行機でわずか1時間半、まさに10年ひと昔です。両先生の経験には遠く及ばないものの、貴重な経験を積むことができた今回の検診に心から感謝です。協力してくださったスタッフ、スポンサーの方々、どうもありがとうございました。来年以降もよろしくお願いします。

秋田赤十字病院 小児科 田村真通